こんにちは、こんばんわ。
今回は、プロ野球球団、ヴィッセル神戸などで有名な楽天にスポットを当ててみたいと思います。
プロ野球球団を持ち、携帯電話キャリアにも参入が決定しているにも関わらずなぜ株価が下がり続けているのか、楽天モバイルから楽天が目指していることについて調べてみました。
楽天ってどんな会社?
楽天は、インターネットを始めとする情報通信事業に留まらず金融事業や保険事業にも進出しています。
楽天のHPに事業の一覧を分かりやすく表現されていました。下図をご覧下さい。
楽天HPより
代表的な事業をピックアップすると
- 楽天市場
- 楽天カード
- 楽天銀行
- 楽天セキュリティ
- 楽天保険
- 楽天スポーツ
- 楽天コミュニケーションズ(携帯事業)
かなり多角的に展開していますね。グローバル企業を目指しているのでしょうか。
事業のコングロマリット化が進んでいる
企業は、事業を開始する際には部署の新設やM&Aを行います。その目的というのは、既存の事業との関連性を高めたシナジー効果(相乗効果)を狙った事が多いです。
一方で、先程確認した様に楽天の事業は楽天市場を始めとしたEC事業(通信販売事業)、楽天銀行や楽天証券・楽天カードなどを扱う金融事業、旅行に特化した楽天トラベル(旅行)事業、などそれぞれの関連性が薄い様々な事業を展開しています。
この様な事業形態を持つ企業は、コングロマリットと呼ばれ多くのグローバル企業が同様の特徴を持っています。
楽天はコングロマリット・ディスカウント化=株価の下落が進んでいる?
楽天の事業は、それぞれの関連性は高いとは言えず、コングロマリット・ディスカウント化が進んでいると考えられます。
コングロマリット・ディスカウントとは?
多様な事業を総合した価値より企業の価値が低い事
何故、コングロマリット・ディスカウントが発生するかと言うと、「事業の価値が独立しており総合的な企業としての価値を投資家が判断する事が困難である」、「低利益の事業と高利益の事業が混在し利益の食い潰しが発生する」事が原因として考えられます。
楽天の株価について
楽天の株価は、この1年きれいな右肩下がりを描いています。
配当金が少ない事が株価上昇の重荷に
現在、株価は約800円なので配当利回りはわずか0.5%です。これでは、多くの投資家達は配当金を貰いながら気長に待つことはせず、損切りをして別の投資先で資金を回収しようと考えるはずですね。
という循環になってしまっています。
楽天は、2015年に公募増資を実施したかと思えば、2017年には自社株買いを実施しました。経営方針に一貫性がない事も嫌気されている理由の一つかもしれません。
東証1部上場企業の高配当株の場合、配当利回りは2〜3%程度あります。また、米国株になりますがアマゾンやアップルは株主配当が無い(無配株)ことで有名です。上記2社は、利益を再投資する事で株価を上げる事で株主還元を実施しています。
現在の楽天の配当政策は、無配当でも無く高配当でも無いという中途半端な印象を持つ投資家が多いです。
楽天のセグメント別売上高
現在のセグメント別収益は
楽天HPより
やはり、創業当初から取り組んでいるインターネットセグメントがメインの売上高になっていますね。
楽天HPより
楽天HPより
続いてフィンテック部門ですか売上高は順調に推移しており営業利益や営業利益率も同様に安定しています
株価回復には、フィンテック分野の成長を持続しつつ、インターネットセグメントの売上、営業利益率の改善が必要です。
楽天モバイルの勝算?
楽天は、docomo、au、ソフトバンクに続く第4のキャリアとして携帯電話事業に本格的に参戦することとなりました。
日本の携帯電話キャリアの変動は、ソフトバンクがボーダフォンの日本法人を買収した2006年から実に12年ぶりの出来事です。
長らく3大キャリアが凌ぎを削ってきた携帯事業に勝算は果たしてあるのでしょうか?
設備投資額6,000億円
楽天は、サービス提供前までに2,000億円の投資、2025年までに4,000億円の投資を計画しています。
設備投資先 | 投資想定額 |
屋外基地局 | 3,000億円 |
屋内基地局 | 800億円 |
コア・バックボーン費用 | 650億円 |
ユーザー対応費 | 800億円 |
販売促進費用 | 750億円 |
ライバルとなる3大キャリアは、毎年設備投資として4,000 〜 5,000億円計上しています。
予算規模として、いきなり全国に展開するのでは無く人口密集地である東名阪地帯に集中的に投資し格安プランを打ち出して他キャリアからの乗換需要を模索することが予想されます。
電波状況の懸念
おそらく楽天モバイルは、東京都市圏、大阪都市圏の中心街での電波問題はないでしょうが地下鉄や郊外では電波状況に問題が発生する可能性があります。
菅官房長官による牽制
2018年8月21日、楽天の携帯事業にとって暗雲の立ちこめるニュースが入ってきました。なんと、安倍内閣の菅官房長官が携帯事業について以下の様な発言をしました。
(携帯利用料は)あまりにも不透明で、他の国と比較すると高すぎるという懸念がある」と指摘。携帯電話会社について「国民の財産である公共の電波を利用している。事業で過度な利益を上げるべきでなく、利益を利用者に還元しながら広げていくべきだ」
これは、既存のキャリア3社(au,docomo,softbank)と楽天モバイルにとって利益額を圧迫し業績が左右しかねない重大な発言です。今後楽天モバイルはどうなってしまうのでしょうか?
想像がつきません。
ドコモのahamoは楽天モバイルにとって強力なライバルに
2020年12月に菅総理大臣と総務大臣を受けて、ドコモからahamo・日本通信から低容量向け通信プランが相次いで発表されました。
3大キャリアとキャリアのMVMOとの差別化を価格に見出していた楽天モバイルにはかなり厳しい展開が予想されます。
楽天モバイルの特徴は、プラチナバンドの割当が無い=屋内通信に弱い・1年間使用料無しで楽天アンリミットを利用が利用できるという採算度外視の姿勢でもキャリアの牙城を崩せていない現状があります。
ドコモのahamoに追随してauとソフトバンクが同等のプランを打ち出せば、楽天モバイルの先行きはかなり厳しい=楽天本体の株価の下方圧力になり得る事態であると考えられます。
楽天とAUの業務提携が発表される
画像引用:マイナビニュース
2018年11月1日に楽天と3大キャリアの一つであるauとの業務提携が発表されました。
KDDI から 楽天への提供
KDDIは、楽天モバイルに4G LTEサービスをローミング提供する事になりました。
提供エリアは、東京23区内・大阪・名古屋を除く全国と混雑しやすいエリアは対象外と発表されました。あくまで、auユーザーの電波が優先であり、余裕のあるエリアを楽天モバイルに貸し出すというスタンスの様です。
楽天 から KDDIへの提供
楽天からKDDIに提供するのは決済フォームや物流分野のネットワーク技術を提供する事が発表されました。
現在auは2019年4月スタートを目指して「au pay」の開発に取り掛かっています。今回の業務提携では、楽天が既にサービスを提供している「楽天pay」のプラットフォーム技術をKDDIに提供します。
更にKDDIが取り組んでいるEC事業の「ワウマ」というショッピングサービスについても楽天のネットショッピング事業のノウハウの一部をKDDIに提供します。
文書出典:エンガジェット日本版
楽天経済圏の拡大
楽天は、楽天経済圏と自称するグループ経済圏の拡大を目指し携帯電話事業に参画を決定しました。楽天は、セグメント別収益からも分かるようにECサイト事業においては、amzonの後塵を拝しています。
そんな中で、高還元のポイント制度である楽天ポイントを多角的に展開しユーザーの囲い込みを図ろうとしています。
楽天経済圏に所属する人々が増えるほど多様な購買データを収集が可能であり、収集したビッグデータを利用して新たなビジネスに活かそうとしています。
先日話題になったレシート買取アプリからも分かるように様に、企業はお金を出してでも消費者の購買行動のデータが欲しい訳です。
今回の楽天モバイルにより携帯事業参入は、単独事業としては、直ぐに黒字化するのは難しいかもしれませんが、楽天経済圏の拡大には貢献するのではないでしょうか?
みんなのビットコインを買収し仮想通貨事業へ参入へ
2018年8月31日に、楽天から仮想通貨事業参入を目指して「みんなのビットコイン」を2億6,500万円で買収するというニュースが入ってきました。
仮想通貨事業参入の目的は
楽天が、仮想通貨事業への参入を決めたのは、
・将来的に、ECサービスや実店舗での仮想通貨決済の広がりに向けた先行投資
・楽天証券の顧客(FX分野)から仮想通貨売買の要望があった
という事がポイントとして上げる事が出来ます。
みんなのビットコインについて
みんなのビットコインについてですが、楽天の開示によると、
なお、2018年4月25日に関東財務局より、経営管理態勢の構築、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係る管理態勢の構築、帳簿書類の管理態勢の構築、利用者保護措置に係る管理態勢の構築、システムリスク管理態勢及び外部委託先管理態勢の構築の改善を求める業務改善命令が発出され、現在は、当該指摘事項の諸課題につき改善を図っております。
みんなのビットコインが仮想通貨交換業者の登録を目指し、仮想通貨事業を進めていくためには、楽天グループの傘下で事業を強化し、シナジー効果を最大化させることで、事業のさらなる安定と拡大とともにユーザーへの新たなサービスの提供を実現できると判断し、株式譲渡に関する協議に入りました。
文章を読む限りみんなのビットコイン単体では、関東財務局の認証を受けるのは難しい様です。みんなのビットコインとしては、楽天のフィンテック分野のノウハウを受け入れることが出来る。
楽天としては、仮想通貨事業を1から始めるより既存の交換業者に手を加える事で設備投資額を抑えつつ事業分野を広げる事がメリットだと考えられます。
クレジットカード手数料引き下げへ
2018年10月に政府からクレジットカード手数料の引き下げ要請が発表されました。
現在楽天の利益を稼いでいて右肩上がりのファイナンス部門への利益率悪化が投資家に嫌気される=株価上昇の重しとなる可能性があります。
今後は、手数料の引き下げに伴い還元率の改悪に着手する可能性も否定できません。
西友と手を組みネットスーパー業界に参入
開始した「楽天西友ネットスーパー」では、ミールキットや楽天のネット通販「楽天市場」で取り扱う、地方の食材などの商品も販売する。 配送料について一定の金額を超えれば無料とする。まずは東京都など16都道府県から開始し、配送地域を徐々に広げる。 ネットスーパー事業について、「2019年から20年の黒字化を目指す」(西友)としており、共通ポイントやデータを使った販促キャンペーンも検討する。
日経新聞より引用
少子高齢化や未婚・晩婚化の進む現代社会では、単身世帯や核家族向けのネットスーパー市場は拡大していくことが予想されています。
楽天西友ネットスーパーの狙い
楽天のネットスーパー業界への参入の動きには、アマゾンのネットスーパー業界事業(Amazonフレッシュ)を既に展開している事実が大きいと考えられます。
また、アマゾン以外にもセブン&アイHDやイオン・アスクルなども生鮮食品を取り扱うネットスーパー事業に参入しています。
生鮮食品を仕入れて販売するためには、産地との信頼関係や鮮度の見極めなどのノウハウが無いと上手く展開することはできません。
子会社の楽天オーネット事業を投資ファンドに売却へ
2018年11月28日に楽天から子会社であるオーネットを投資ファンドに売却するという発表がありました。
楽天株式会社(代表取締役会長兼社長:三木谷 浩史、以下「当社」といいます。)は、当社連結子会社である株式会社オーネット(以下「オーネット」といいます。)の全株式をポラリス・キャピタル・グループ株式会社(代表取締役社長:木村 雄治、以下「ポラリス」といいます。)が新たに設立する会社へ譲渡することを決定し、当該会社との間で株式譲渡契約を本日締結しましたのでお知らせします。
オーネットは、結婚相手紹介サービスを行う事業会社です。売却先は、ボラリス・キャピタル・グループ株式会社という投資ファンドです。
楽天オーネットの売却益は250億円
楽天は、全株式をボラリス・キャピタル・グループに売却する為結婚相手紹介サービスからは全撤退する判断を下したと考えられます。
楽天経済圏の拡大という観点から見ると縮小したかに見えますが、現在注力している、楽天モバイルによる携帯電話事業やネットスーパー事業に注力するという選択と集中を決断したと考えられます。
売却は、2018年12月下旬を予定しており発生する特別利益250億円は四半期決算及び楽天の株価にとってプラスに働きそうです。
楽天の今後について
楽天の株価水準は、日経平均がほぼ右肩上がりであったにも関わらずこの1年で40%以上下落しています。
その背景には、売上のメインを占める楽天市場がamazonの攻勢に有効な対抗手段を持たない事や、楽天モバイルによる携帯事業の将来性と設備投資に投資家がNOを突きつけていると分析できます。
しかし、楽天も何もしてない訳ではなく、楽天経済圏の構築と拡大を目指し、フィンテック分野に注力している様子も見てとれます。
楽天経済圏を拡大し維持し続ける事が出来れば株価の回復も期待出来ると思います。今後も楽天の事業に注視していきたいと思います。
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