こんにちは、こんばんは。
ほんの数年前まで信じられなかった銀行業界の危機が迫ってきています。スルガ銀行による融資トラブルも記憶に新しいですね。
一体銀行業界で何がおこっているのでしょう?
銀行の仕事って何?
預金業務
預金業務は、預け入れられたお金(資産)を管理しつつ保管する仕事です。
貸付業務
貸付業務は、預金業務で集めたお金を融資を必要とする企業や個人に利子をつけて貸付をする業務です。
為替業務
現金をある口座から別の口座へ送金する業務の事を言います。私たちの身近なところでは、電気代や水道代の預金振替や自動引き落としなどが該当します。
また、ネットショッピングなどでお店の口座に送金する業務も銀行の為替業務の一環です。
銀行業界の今
利子収入
銀行は、普通預金や定期預金を通じてお金を集めています。次に集めたお金から。他行行きの小切手や為替手形を決済します。そして、残ったお金に金利(利息)を付けて貸出(融資)ます。
銀行は、お金を必要とする人に実質預金から金利(利息)をつけてお金を貸し出して逆にお金を預け入れてくれている人に金利を支払っています。融資金利の方が利息が高い為その利鞘で儲けることが出来ていた訳です。
国債運用
しかし、2008年に発生したリーマンショックにより企業の設備投資は一気に冷え込みました。
銀行は、お金を貸して利子を貰わなければ預金をしてくれている人に利子だけを支払い続けなければならないことになります。
そうなると景気が冷え込んでいてお金の借り手がいなくても運用してお金を増やさなければならなくなります。
そうした状況下において銀行は、リスクがきわめて低く利益を確実に稼げる国債に実質預金の多くを振り向けました。
国債を含めた債券投資の特徴は、
- 債務不履行(デフォルト)しなければ必ず収入が得られる
- 満期保有する事が求められる
ことです。債券投資については、「債券投資と株式投資の違い」で記事にしてみました。
自己資本比率の国債基準
日本国内では従来、自己資本比率は4%代あれば十分だと言われていました。
しかし、国際的にはバーゼル合意で自己資本比率な8%以上が望ましいと定義されています。以下の文章は、日本銀行HP記載のバーゼル合意の一文です。
バーゼル合意とは、バーゼル銀行監督委員会(注1)が公表している国際的に活動する銀行の自己資本比率(注2)や流動性比率等に関する国際統一基準のことです。日本を含む多くの国における銀行規制として採用されています。
バーゼル合意は、1988年(昭和63年)に最初に策定され(バーゼルI)、2004年(平成16年)に改定されました(バーゼルII)。その後、2007年(平成19年)夏以降の世界的な金融危機を契機として、再度見直しに向けた検討が進められ、2017年(平成29年)に新しい規制の枠組み(バーゼルIII)について最終的な合意が成立しました。
なお、バーゼル銀行監督委員会の常設事務局が国際決済銀行(Bank for International Settlements。略して「BIS」と言われます)にあることから、バーゼル合意は「BIS規制」と呼ばれることもありますが、BISとバーゼル銀行監督委員会は別組織のため、「バーゼル規制」がより正しい呼称と言えます。
日本銀行HP https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/pfsys/e24.htm/
バーゼルI
バーゼルIは、国際的な銀行システムの健全性の強化と、国際業務に携わる銀行間の競争上の不平等の軽減を目的として策定されました。これにより、銀行の自己資本比率の測定方法や、達成すべき最低水準(8%以上)が定められました。わが国では、1992年度(平成4年度)末から、バーゼルIが本格的に適用されました。
日本銀行HP https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/pfsys/e24.htm/
前述しましたが、自己資本比率の国内基準が4%とされる中、国際的には自己資本比率は8%必要だとされていました。この国際ルールは日本の銀行にとって厳しいとなっていきます。
バーゼルII
バーゼルIIは、(1)最低所要自己資本比率規制(リスク計測の精緻化)、(2)銀行自身による経営上必要な自己資本額の検討と当局によるその妥当性の検証、(3)情報開示の充実を通じた市場規律の実効性向上、を3つの柱として策定されました。
バーゼルIIでは、達成すべき最低水準(8%以上)はバーゼルIと変わらないものの、銀行が抱えるリスク計測(自己資本比率を算出する際の分母)の精緻化が行われました。わが国では、2006年度(平成18年度)末から(先進的なリスクの計測手法を採用する一部の銀行は翌2007年度末から)バーゼルIIに移行しました。
日本銀行HP https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/pfsys/e24.htm/
バーゼルⅡでは、よりリスクを厳密に測定し対応することが求められる様になりました。
バーゼルIII
バーゼルIIIは、世界的な金融危機の再発を防ぎ、国際金融システムのリスク耐性を高めることを目的として策定されました。
具体的には、銀行が想定外の損失に直面した場合でも経営危機に陥ることのないよう、自己資本比率規制が厳格化されました。また、急な資金の引き出しに備えるための流動性規制や、過大なリスクテイクを抑制するためのレバレッジ比率規制等が導入されることになりました。規制を設計する際、金融システム全体の安定性を維持するというマクロ・プルーデンスの観点が重視されている点も一つの特徴です。
バーゼルIIIは、わが国を含む世界各国において2013年(平成25年)から段階的に実施されており、最終的には、2027年初から完全に実施される予定になっています。
日本銀行HP https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/pfsys/e24.htm/
バーゼルⅢが策定されるきっかけとなったのは、リーマンショックが原因です。
世界中の銀行がサブプライムローン証券を保有しておりアメリカの住宅市場の下落が世界規模の経済危機に繋がりました。自己資本にレバレッジをかけて金融商品を運用するリスクを認識し歯止めをかける様にルール作りをした訳ですね。
リーマンショックについては、「多くの投資家が恐れる大暴落~リーマンショックの歴史~」で記事にしてみました。
バーゼル合意について
バーゼル合意を順守する為には、国債投資に実質預金を振り向けすぎる事はできなくなりました。自己資本を高める事は、金融危機などが来た時に業務が正常に回る様に準備する為に必要だという事です。しかし、貸付や運用業務で利益を上げることのできない銀行にとっては苦しい運営を強いられることになっています。
銀行の貸出状況
昨年は、株価も好調だったこともあり貸出超過となる事が多かった様です。実質預金額の多くを貸出できる事が出来ていれば銀行は利子を得ることが出来ていると判断できます。
マイナス金利の導入
マイナス金利とは、各銀行が日本銀行の当座預金に預け入れてたお金の一部に発生する金利です。冒頭で述べた様に預金した場合本来は、利息を受け取る権利があります。
があります。
それは、国内の経済情勢を刺激する事が目的としてあります。
実質預金を日本銀行の当座口座に預け入れるのではなく、融資を必要とする企業や個人にお金を貸し出してお金を市中で循環させて発展していこうと考えて実施されました。
しかし、結果的には効果は限定的で満足な結果は得られななった様です。
フィンテックの台頭
情報通信技術の進歩で、従来の金融業に所属していなかった企業が金融業に参画して来るようになりました。
電子決済サービスが代表的な例としてあげられるます。
先日ブログで取り上げたKyashは正に急先鋒の存在だと言えます。
また、融資先の判断は、かつてバンカーの花形業務でしたが、現在は過去の融資実績のビッグデータをAIに分析させて瞬時に融資判断できる様になっています。
IT技術の発展も既存の銀行を苦しめている様です。
スルガ銀行の事件
スルガ銀行は、事件が起きるまで地方銀行の成功モデルとして持ち上げられていました。以下の画像は当時のスルガ銀行を讃えている記事です。
[browser-shot url=”http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53428″ width=”600″ height=”450″]出典:現代ビジネス
スルガ銀行の融資モデルは、不動産ローンの融資判断をスピーディーに行う、他行がためらう信用情報を有する借主に貸し付ける、融資のスピードと柔軟性を活かして融資する際には市場金利より高く貸し付け、利益を得ていました。
しかし、その収益の裏には融資条件の改ざんを組織的に行っていたり、年収500万程度のサラリーマンに1億円融資するなど過剰なリスクを課す融資を実施するなどの数々の問題が隠れていました。スルガ銀行が行ったことは決して許されることではありませんが、銀行として生き残ることの難しい時代が来つつある事を表す事件だったと思います。
まとめ
日本の銀行は、ゼロ金利政策、バーゼル合意、日本国債の利回りの低下、フィンテック(IT技術)の進歩など様々な逆風が吹くなかで苦境に立たされています。
銀行が安定の業界だとされていた時代もあった事を考えると次はどの業界が危機に陥るかは予測することができません。
中々明るい材料の少ない銀行業界に投資する事はリスキーだと感じます。今後も銀行業界がどうなっていくのか注視していきたいと思います。
本日もありがとうございました。
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